第8回ピアノ・リサイタル批評(ショパン11月号より)

下記批評は『ショパン』2015年11月号内で菅野 泰彦(すがの やすひこ)氏の執筆により掲載された者を転載したものです。


『ショパン』2015年11月号

「第8回ピアノ・リサイタル〜デビュー30周年記念〜

2奏者の交感が織り成す情感に満ちたフランク」

 チェコの『視覚障害者のための国際音楽コンクール』で特別賞をもらった経歴を持つピアニスト、長澤晴浩がデビュー30周年を記念した演奏会を開いた。
 前半のシューマンの2曲、《アラベスク》では各声部のバランスも良く、繊細な表現が叙情性を深めた。
主部は軽やかで、温かみのある表情感で奏され、鬱々とした表情の《ミノーレ(短調)I 》と強弱をはっきりつけた《ミノーレ II 》がコントラストをつくった。
《交響的練習曲》ではテクニックもみごとで、それぞれの練習曲の性格をよくとらえ、ときに細やかに、ときに広がりを持つ音調で多様な情感をも感じさせた。
とりわけ第6番での衝動を想わせる奏楽や終曲での輝きのある意気揚々とした弾奏は印象的であった。
 後半は長澤と同じ音楽団体『新星’78』のメンバーであるヴァイオリニスト佐藤博志を迎えて、フランクのソナタを共演。
方向性や表情を合わせ、音のバランスもよく、まさに2奏者によって作られる音楽となった。
第1楽章でのヴァイオリンのつややかな音による伸びやかさ、ピアノは端々まで情緒を漂わせ、
第2楽章では両奏者が同調して、あふれんばかりの情熱を表し、
第3楽章は両者の交感とデリケートな表現が幻想性を漂わせた。
終楽章では光沢感と風格のあるヴァイオリンの弾奏に、ピアノは生彩感と高揚感を感じさせ、明朗かつ活力みなぎる奏楽で印象を残した。


(8月26日/東京文化会館小ホール)
(菅野泰彦)

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