第6回ピアノ・リサイタル批評(ムジカノーヴァ3月号より)

下記批評は『ムジカノーヴァ』2008年3月号内で原明美(はら あけみ)氏の執筆により掲載された者を転載したものです。




長澤晴浩
ピアノ・リサイタル

 武蔵野音楽大学を卒業した長澤晴浩は、85年に東京でデビュー・リサイタルを開き、
88年に「第5回視覚障害者のための国際音楽コンクール」(チェコ)で特別賞を受賞したピアニストであり、
現在は、演奏活動のかたわら、後進の指導に当たるほか、楽譜点訳法の研究にも携わっている。
当夜のリサイタルでは、バッハの《フランス組曲第5番ト長調》BWV816、
モーツァルトの《ピアノ・ソナタ第8番イ短調》K310、
シューベルトの《ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調》D960が演奏された。
 バッハ作品に聴く長澤の演奏は、表現にメリハリがあり、生命力が豊かな印象を与えた。
モーツァルト作品も、ほぼ同様の印象である。途中、演奏に少し乱れが生じる場面はあったが、
全体としては落ち着いた構えで弾き進められていた。
今回最も注目されたのが、シューベルト作品である。強弱にかかわらず深みのある、
ていねいな音色作りによって、清らかな美しさが生み出されていた。
また、長澤の鋭い集中力を反映した、情熱を秘めた表現も、強く印象に残る。
(11月30日、津田ホール)  原 明美



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